明るい未来が大好きな漫画家、はまかぜです。
この記事では、もともと8ページで制作した漫画「未来であの日を」をwebtoonに再構成した作品を載せます。
また、制作意図とか制作した時に知ったことなどを投稿します。
本編
制作のきっかけ
漫画家こうの史代先生の『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』が大好きで、よく読んでいました。
(こうの史代作品は、『街角花だより』『かっぱのねねこ』も大好きです)
「こうの史代先生のような心震える漫画を作ってみたい!」と思っていても、
広島出身でもないはまかぜができるわけないし、そんなの広島の人にも無礼なんだと思っていました。
そんな折、会社をクビになって(涙)時間ができ、毎日漫画を作っていたところネタが尽きて「『その日の記念日』をテーマにした未来世界の漫画」を制作してみました。
やりたかった未来の漫画を描けるきっかけになり、とても楽しんでいました!
きのう8月3日にちなみ、ハサミをテーマにした未来漫画描きました。 pic.twitter.com/GR5CdnSpLA— はまかぜ@漫画家 (@Nag1sA_) August 4, 2021
そして…8月6日には広島原爆忌です。
これは逃れられないと思い、『未来の広島原爆忌はどう過ごされるのか』というテーマで漫画を作ろうとしました。
まさか制作に半月もかかり8月6日の公開には全く間に合わなかったとは、このとき思ってもみませんでした。
設定の解説:なんで擬似体験させるのか
「現実に近い形で原爆を投下された日を体験させる」というのは過激な発想ですが、
現在の現実世界でも問題になっている語り手不足に対する一つの対応策として考えられた。としています。
作中で「体験プログラム」を行う生徒たちは中学生程度の年齢です。
「体験プログラム」の参加者は、事前学習をします。知らないと体験プログラム内で酷い目に遭いますから、いろいろ調べざるを得ないのです。
・爆心地はどこか
・爆心地から被害はどう変わったか
・どういう建物に逃げればマシなのか
・避難所はどこか
・どういう救命措置を取ればいいのか
など………
作中で主人公の中村は、他の生徒と同じように原爆の投下15分前に広島市の中心部のどこかに放されるということは知っていました。
中村は今回、体験プログラムが2回目であることの経験値をフル活用します。作中で体験が開始された場所が猿猴橋(えんこうばし)であることを推察して、近くの木造でない建物である広島駅を目指して走りました。
これは事前学習があったおかげとしています。
また、設定では体験当日の服装は規制があり、未来の服にありがちな「体を守る先端機能を持った服」を着ることは禁止されています。
だから生徒のうち何人かは夏なのに長袖長ズボンを着てきました。
今回の主人公中村も長袖と丈夫な素材のスカートを着てきました。
「生き抜きました」の真意/体験プログラムの限界
体験プログラムは、自分の身になって戦禍を体験させることで戦争被害の忘却を防いだり、自発的な学習を促したりする効果がありますが、当事者の苦しみを理解するというという点、設定上の限界があります。
体の苦しみは体験できても、大切な人や自分の住む街を失うという悲しみは再現できません。
そこで、はまかぜはシナリオ内で体験プログラム内の広島市民との交流させることで、主人公(中村)と読者様の感情が動くのではと考えて、中村に人命救助を試みさせることにしました。
動機として、作中の中村は前回の体験で幸運にも何もせず生き残ったことを恥じています。
「貴方に生き残る資格はあったの?という意味に聞こえた」というのは彼女の被害妄想ですが、彼女は前回の体験から自分が成長した実感が心からほしくて人命救助を試みたという訳です。
(作中の登場人物と作者の利害が一致した感じがして、ネームを書きながら一人でスキップしたはまかぜ)
読者様の反応
今回は日本史における大厄災を舞台にしたお話です。
原爆投下がテーマのSF漫画というのを思いついたのは良いけど他の作品で見たことがなかったので、他の漫画家さんは頭が良いから、思いついたけど不謹慎だと感じて発表してないのでは…と考えてしまいます。
「数えきれない悲劇を生んだ出来事を自分の創作世界のネタにするなんて」と思われてしまわないかという点が不安でした。
しかし
公開後、フォロワーさんからありがたい感想をいただきました。
もちろんお叱りがあれば受けますが、こういう感想は沁みます。
今回は私が目指す「ここ行きたいな、と思えるような明るい未来都市」というテーマとは離れてしまいましたが、作りながら歴史の知識を学び、8ページで主人公の成長を描くことができました。
次作も精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!
参考になった本、サイト
おまけです。
参考図書
『夕凪の街 桜の国』巻末地図
参考サイト
マップから見る | 写真アーカイブ | ヒロシマの空白 被爆75年 —街並み再現— | 中国新聞hiroshima75.web.app
New technologies and the modern battlefield: Humanitarian perspectives e-brief.icrc.org 残念ながらリンク切れ……
↑原爆投下前の街並みや、原爆投下後に倒壊しなかった建物を調べるために使いました
被爆建物リスト - 広島市公式ホームページ 被爆建物リスト www.city.hiroshima.lg.jp
↑「中国新聞社の社員が語った原爆投下の日」の項目参照
漫画に反映することはできなかったけど読んでみて欲しい記事
「体験プログラム」という設定を思いついたあと、もしはまかぜ自身が原爆を落とされた後の広島市に飛ばされたら困っている人に水を配って渡ろうと思っていたくらい何も知りませんでした。
(水をあげたら安心して死ぬという論が信じられなかったから)
以下のページで、なぜ水をあげてはいけないのかを複数の理由で説明しています。
10代がつくる平和新聞 − ひろしま国:8.6探検隊【被爆者に水をあげてはだめだった?】 www.hiroshimapeacemedia.jp
原爆投下後、懸命に救護に当たっていた方の体験談が深く胸に突き刺さりました。
修学旅行事前学習ハンドブック−7 よくある質問 - 広島市公式ホームページ 修学旅行事前学習ハンドブック−7 よくある質問 www.city.hiroshima.lg.jp